昨日足柄上商工会を訪問して現在開発中のロボットの進捗状況と今後の方向性についてお話ししました。打ち合わせの場には事務局長の野本さんと経営指導員で中井町を担当している岡崎さんのお二方に同席していただきました。昨日は実際ロボットの動くところを見ていただいたほうが良いと考えて、簡単なデモをお見せしました。
お二方は非常に興味を持って見ていただいたようで、今後の方向性について活発に意見交換をさせていただきました。資金繰りについては「神奈川県ビジネスモデル転換事業費補助金」というものがあり、5月一杯まで公募を行っているとのこと。今後高性能3Dプリンタなどを導入する予定があれば、申請してみる価値があるとのことでした。また、ロボットの大量生産を行うのが難しければ、ロボットを買い取るのではなく、貸し出すようなビジネスモデルも考慮すべきではないか、との意見をいただきました。
商工会のみではなく、中井町の産業振興課とも連携をして今後の進め方について話し合いをおこなうということも勧められました。また、岡崎さんからは中井町役場裏にある田んぼをフィールドテストで使用してもよいとの申し出がありましたので、5月下旬から6月初旬に行われる田植えの時期に実際に現地に伺ってテストの進め方を決めていきたいと考えています。
現在開発中のカニを模倣した6足草刈ロボットの写真をCAD図面と共に載せました。このロボットはそれぞれの脚部に3つのサーボモータを持ち、脚部先端部には磁気ホールセンサを利用した圧力計測機能を持っています。ロボット前面にははさみが搭載されていてカメラによって撮影された映像を基に自律的に草刈りをおこないます。コントローラはArduino Nano EveryとRaspberry Pi Zero WHによって構成され、前者には加速度センサ、磁気ホールセンサが接続され、Raspberry Pi に定期的にセンサ情報を送信します。Raspberry Piにはカメラが接続され、Arduinoからのセンサ信号を統合してサーボに対して目的角度を送信します。
ここ数年で比較的大型の草刈ロボットがいくつか開発、販売されていますが、6足の自律型ロボットで草刈りをおこなうというのは恐らく初めてと思われます。現在外部への販売に向けてフィールドテストの真っ最中です。テスト結果は随時ホームページ上にアップしていきますので、興味のある方はぜひご覧ください。
合同会社 Nakai Field Robotics
代表社員 鶴井政雄
カメラを除いてロボットに搭載されるセンサは以下の通りです。
- 3軸加速度センサ(ADXL345, Analog Devices):姿勢の変化、進行方向の変化、衝突の検知
- ホール効果センサ(A1324, Allegro MicroSystems):接地の検知、衝突の検知
- サーボモータ(KRS-3301,Kondo Kagaku,目標角度との差):姿勢の変化、衝突の検知
3.のサーボモータは純粋なセンサではありませんが、モーター+センサという構成なのでセンサとして取り扱うことにします。先日投稿したブログでは加速度センサを障害物回避に利用する手順を示しましたが、そこで示したように加速度だけではなく、速度、変位も後付けで計算できるので非常に有用です。まずは加速度センサを姿勢変化の把握のために利用する場合の具体的な方法を以下に示します。
- 姿勢の変化は、現在の重力加速度ベクトル g_vecと水平時の重力加速度ベクトル g_initの内積をとってそれを1.0と比較することで判断できます。内積をとる前にはまず2つのベクトルを長さ1.0となるように正規化しておきます。水平に近い姿勢の場合は内積の値は1.0に近くなります。また、ロボットがひっくり返ると-1.0に近くなります。
- 今回はロボットに設置されたはさみ及びアームの重量によって常に前掛りの荷重がかかっています。そこで姿勢を補正して水平時の重力加速度ベクトルになるべく近づけるようにします。ロボットの姿勢が前掛りになっている場合、6本の脚部先端部に埋め込まれたホール効果センサを利用した圧力計測では前脚に最も荷重がかかり、次いで中脚、最も荷重が少ないのは後脚となります。さらにはさみ及びアームの重心は右に寄っているので、右前脚に最も荷重がかかり、対角線上の左後脚は最も荷重が軽くなります。
- 同時にサーボモータの目標角度からのずれは、前脚が最も大きく、次いで中脚、最も小さいのは後脚となります。さらにはさみ及びアームの重心は右に寄っているので、右前脚のずれが最も大きく、対角線上の左後脚は最もずれが小さくなります。
- このように加速度センサ、ホール効果センサ、サーボモータそれぞれの出力に関連性が出てきます。姿勢変化の補正はこれら3種類のセンサからの出力を総合的に見て判断します。こうして多角的に見ることで姿勢変化が本当に発生しているかどうかをより精緻に見極めることが可能になります。
- サーボモータの目標角度は、脚部先端部が予め設定された接地点に一致するように逆運動解析によって計算して求めます。
- まずはロボットが歩行を開始していない状態で姿勢の補正をおこない、その後リアルタイムでの補正に移行することにします。